日本の超過および過少死亡数ダッシュボード
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ダッシュボードについて
このダッシュボードでは、日本国内の新型コロナウイルスの感染流行期(2020年1月以降)およびそれ以前の期間(2017-2019年)におけるすべての死因を含む超過および過少死亡数の算出値、および主要死因別の超過および過少死亡数の算出値を表示しています。地域や期間を選択することにより、興味がある地域・期間における超過および過少死亡数を表示させることが可能です。超過および過少死亡数は、「過去のデータをもとに統計モデルから予測された死亡数」と「実際に観測された死亡数」の差として算出されています。統計モデルとデータ解析の説明については、学術論文あるいは、こちらの国立感染症研究所のホームページをご覧ください。
全死亡:すべての死因を含む場合、観察された超過死亡数は新型コロナウイルス感染症を直接の原因とする死亡の総和だけではなく、感染症の流行に伴う外出の抑制などの生活習慣の変化等に伴う持病の悪化による死亡といった間接的な影響による死亡も含まれています。また過少死亡数の内訳には、新型コロナウイルス感染症流行に伴う例年以上の感染症対策や健康管理の実施に関連する死亡数減少と、関連しない死亡数減少の両方が含まれていると考えられます。すべての死因を含む超過および過少死亡数の内訳の解釈についての詳細は、下記「すべての死因を含む超過および過少死亡数の解釈」をご覧ください。
主要死因別:新型コロナウイルス感染症の間接的な死亡影響を評価するため、このダッシュボードでは主要な死因別の超過死亡数、及び死因別の過少死亡数の算出結果も報告します。過少死亡数を算出することで、新型コロナウイルス対策等、例年以上の感染症対策や健康管理の実施による健康への正の影響の評価に役立ちます。日本の主要な死亡原因を含む、次の6疾患分類を対象としています(括弧内は国際統計分類(ICD-10)に基づく分類)。
- (1) 全ての死因の死亡のうち、新型コロナウイルス感染症による死亡(U07.1)を除いた死亡
- (2) 呼吸器系の疾患による死亡(J00-J99, R09.2, U04)
- (3) 循環器系の疾患による死亡(I00-I99)
- (4) 悪性新生物(がん)による死亡(C00–C97)
- (5) 老衰による死亡(R54)
- (6) 自殺による死亡(X60-X84)
(1)は新型コロナウイルス感染症を原死因とする死亡を除くことで、他の死因が原因である超過および過少死亡数が得られます。これにより、新型コロナウイルス感染症の間接的な死亡影響の全体像についての洞察が得られます。(2)〜(5)は2019年の我が国の死亡数を死因順位別にみたときの上位5疾患が属する国際統計分類(ICD-10)です。(6)は既に超過死亡を示唆する先行研究があり、重要な死因として分析対象に加えました。(2)〜(6)を用いた解析は新型コロナウイルス感染症の間接的な死亡影響を個別に把握することを目的としています。
日本国内での新型コロナウイルスの影響に関しての「データに基づく開かれた議論」に貢献することが、このダッシュボードの目的です。開かれた議論の担保のため、本ダッシュボードで用いられたデータおよび解析用のプログラムコードは全て公開されています(補足資料)。また、本ダッシュボードにおいて示される超過および過少死亡数の値を適切に解釈するためには、超過および過少死亡の概念的な意味や、統計モデルを用いた算出方法についての適切な理解が重要です。国立感染症研究所のホームページにも解説およびQ&Aを収録しておりますが、さらなる質問がある場合にはこちらで受け付けております。
超過および過少死亡数の定義
このダッシュボードにおける超過および過少死亡数は、例年の死亡数をもとに推定される死亡数(予測死亡数の点推定)[閾値1]およびその95%片側予測区間(上限・下限)[閾値2]と、実際の死亡数(観測死亡数)との差のレンジで提示しています。例えば、例年の死亡数をもとにした死亡数の推定結果が「点推定値100人、95%片側予測区間(上限)125人」であったとき、実際の死亡数が「130人」であれば、超過死亡数のレンジは「5-30人」と提示されます(実際の死亡数が予測死亡数を下回る場合には超過死亡数は0人とされます)。また、推定結果が「点推定値155人、95%片側予測区間(下限)140人」であったとき、実際の死亡数が「130人」であれば、過少死亡数のレンジは「10-25人」と提示されます(実際の死亡数が点推定値を上回る場合には過少死亡数は0人とされます)。
超過および過少死亡数の算出法
超過および過少死亡数の算出方法は、国際的に標準的な手法としての定評がある米国疾病予防管理センター(CDC)の用いるFarringtonアルゴリズムを用いています。詳しい方法については、国立感染症研究所のホームページをご覧下さい。
すべての死因を含む超過および過少死亡数の解釈
すべての死因を含む場合、示されている超過死亡数の内訳には、新型コロナウイルスに関連する死亡数と、関連しない死亡数の両方が含まれていると考えられます。このことから、「超過死亡がある」ことは「新型コロナウイルスによる死亡がある」ことを必ずしも意味するわけではなく(新型コロナウイルスに関連しない死亡により超過死亡が生じている可能性がある)、同様に、「超過死亡がない」ことも「新型コロナウイルスによる死亡がない」ことを必ずしも意味しない(新型コロナウイルスによる死亡があるが新型コロナウイルスを直接の原因としない死亡数の減少により相殺されている可能性がある)ことにご注意ください。
また一般に、超過および過少死亡はコロナ以外の感染症や気温の変化、あるいはその他の偶発的な要因によっても生じます。実際に、新型コロナウイルス流行期以前(2017-2019年)にも散発的な超過および過少死亡が見られています。これらの流行期以前の超過および過少死亡数は「もし新型コロナウイルス流行が無かった場合」の超過および過少死亡数のレンジについての参照となりうるものと考えられます。
新型コロナウイルス流行期(2020年1月以降)においては、新型コロナウイルスを直接の原因とする死亡に加えて、例年より増加している死因(例えば、外出自粛等に伴う病院不受診や生活習慣の変化に伴う持病の悪化による死亡)と、例年より減少している死因(例えば、他の感染症による死亡)が混在している可能性が高く、新型コロナウイルスの感染拡大による間接的な影響も含まれています。より詳細には、今回算出されたすべての死因を含む超過死亡数は以下の内訳等の死亡の総和と解釈できます。
- 新型コロナウイルス感染症を直接の死因と診断され、実際に新型コロナウイルス感染症を原因とする死亡。
- 新型コロナウイルス感染症を直接の死因と診断されたが、実際には新型コロナウイルス感染症を原因としない死亡(例えば、実際の死因はインフルエンザだが、新型コロナウイルス感染症が死因と診断された死亡。ただ新型コロナウイルス感染症の診断がPCR検査に基づく現状では、ほぼ該当例はないと考えられる)。
- 新型コロナウイルス感染症が直接の死因と診断されなかったが(他の病因を直接の死因と診断された)、実際には新型コロナウイルス感染症を原因とする死亡。
- 新型コロナウイルス感染症が直接の死因ではないが、感染症流行による間接的な影響を受け、他の疾患を原因とした死亡(例えば、病院不受診や生活習慣の変化に伴う持病の悪化による死亡)。
- 新型コロナウイルス感染症が直接の死因でなく、また新型コロナウイルス感染症流行による間接的な影響を受けたものでもない死亡(2017-2019年の超過死亡数はこれらの死亡を反映したものである)。
また、算出された過少死亡数は、主に以下の内訳等の死亡数の減少分の総和と解釈できます。
- 新型コロナウイルス感染症流行に伴う例年以上の感染症対策や健康管理の実施に関連する死亡数減少。
- 新型コロナウイルス感染症流行に伴う例年以上の感染症対策や健康管理の実施に関連しない死亡数減少(季節性インフルエンザの流行状況の影響や気候要因等の偶然的要因による死亡数減少など)。
補足資料
閲覧環境
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研究班構成員
厚生労働行政推進調査事業費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「医療デジタルトランスフォーメーション時代の重層的な感染症サーベイランス体制の整備に向けた研究」(23HA2005)
※研究主幹
橋爪真弘※
東京大学大学院 医学系研究科国際保健政策学教室野村周平※
慶應義塾大学 グローバルリサーチインスティテュート江口哲史
千葉大学 予防医学センター米岡大輔
国立感染症研究所 感染症疫学センター川島孝行
東京工業大学 情報理工学院田上悠太
東京海洋大学 海洋工学部流通情報工学科河村優美
慶應義塾大学 医学部医療政策・管理学教室林岳彦
国立環境研究所 環境リスク・健康研究センター金允姫
東京大学大学院 医学系研究科国際環境保健学Chris Fook Sheng Ng
東京大学大学院 医学系研究科国際保健政策学教室Paul LC Chua
東京大学大学院 医学系研究科国際保健政策学教室Ganan Devanathan
東京大学大学院 医学系研究科国際保健政策学教室鈴木基
国立感染症研究所 感染症疫学センター